はじめに
「システムを入れたのに、気づけば元の紙とエクセルに戻っていた」——神奈川県の中小企業を支援するなかで、こうしたデジタル化の失敗を数多く見てきました。原因はツールの性能ではありません。
この記事でわかること
- 中小企業のデジタル化が失敗する共通パターン
- 導入前の要件定義で決めるべき3つのこと
- CREW自身の失敗談と、立て直しの実際
なぜ中小企業のデジタル化は失敗するのか?
結論から言うと、失敗の大半は「業務を言葉にする前にツールを買ってしまうこと」が原因です。
世間では「DX」という言葉が先行していますが、その前に必要なのは日々の紙業務を置き換える地に足のついた設計です。
「とりあえずツール導入」の罠
デジタル化の失敗で最も多いのは、目的が曖昧なままツール導入が先行するパターンです。
AppSheetとは、Googleが提供する、プログラミング不要で業務アプリを作成できるノーコードツールです。便利な道具ですが、「どの業務の、何の手間を減らすか」が決まっていなければ成果は出ません。
一部の声だけでシステムが作られる
もうひとつは、経営者や声の大きい担当者の意見だけで仕様が決まることです。毎日入力する現場の方々の動きが反映されず、完成後に「二度手間だ」と使われなくなる。
今までの支援実績では、現場への聞き取りなしに作られた既存システムの多くが、導入半年で利用率3割を下回っていました。
ひとことまとめ:中小企業のデジタル化が失敗する最大の原因は、ツールの善し悪しではなく、業務を言葉にする工程(要件定義)を飛ばすことにある。
失敗を防ぐ要件定義では何を決めるべきか?
要件定義とは、システムを作る前に「誰が・何のために・どの業務をどう変えるのか」を言葉にして固める工程です。難しい専門作業ではなく、3つの問いに答えることから始まります。
答えるべき3つの問い
第一に「一番時間を奪われている業務はどれか」、
第二に「その業務の理想の流れはどうか」、
第三に「誰が毎日それを使うのか」。
この3つを紙に書き出すだけで、作るべきものの姿はほぼ決まります。
現場を巻き込むのは「作る前」
現場の方々に意見を聞くのは、完成後ではなく設計の段階です。
CREWの支援では開発前の聞き取りを最低2回行うことを標準にしており、
この進め方に変えてから導入後の大きな作り直しはほぼ発生していません。
ひとことまとめ:要件定義は「時間を奪う業務・理想の流れ・毎日使う人」の3点を、作る前に言葉にする作業である。
失敗談:ヒアリング1回で作ったアプリの末路
これは私自身の失敗談です。
起きたこと
独立して間もない頃、神奈川県内の中小企業様の業務アプリを、ヒアリング1回だけで開発しました。しかし現場の実際の流れと噛み合わず、導入から2か月で利用者はほぼゼロに。業務の棚卸しからやり直し、立て直しに約1か月半かかりました。
立て直しで何を変えたか
やり直しでは現場に半日張り付いて流れを観察し、入力項目を半分に減らしました。「業務設計フェーズを必ず設ける」という相模原市CREWの今の標準は、この失敗から生まれました。
ひとことまとめ:設計を飛ばして得られる時間の節約は、後の「作り直し」で倍以上のコストになって返ってくる。
よくある質問
A. 目的が曖昧なままツール導入が先行することです。「どの業務の、何の手間を減らすか」を言葉にする前にシステムを作り始めると、現場に合わないものが出来上がり、使われないまま形骸化します。
A. できます。「時間を奪われている業務」「理想の流れ」「毎日使う人」の3点を紙に書き出すことが出発点です。CREWのような伴走型の支援者と一緒に整理すれば、専門用語を知らなくても進められます。
A. 捨てる前に業務の棚卸しをやり直してください。入力項目を減らす、対象業務を絞るだけで復活する例は少なくありません。原因が設計にあるなら、直すべきはツールではなく設計です。
まとめ
デジタル化の失敗に共通するのは、要件定義を飛ばして道具から入ってしまうことです。時間を奪う業務・理想の流れ・毎日使う人の3点を言葉にしてから、小さく作って現場と直す。私の失敗が、皆さんの遠回りを防ぐ材料になれば幸いです。